キッチンガーデンの庭づくり 種まき編
雪解けが進み、十勝千年の森に春が訪れています。
ガーデナーにとって心が躍る季節に、温室ではキッチンガーデンのための野菜やハーブ、一年草の切り花などの種まきが始まりました。
十勝千年の森では、庭の栽培する場所の地面に直接種をまき、そのまま現地で植物を栽培する「直まき」と、プラグトレイ(もしくはセルトレイ)に種をまき、十分に発根させたものを鉢上げする「育苗」の2つの方法で、キッチンガーデンの栽培作物の準備をします。ここでは、プラグトレイを使用した種まきをご紹介しましょう。
まず種まき専用の土の状態を見て、さらさらと乾きすぎているようであれば水分を与えます。乾きすぎず適度な湿り気を持っていると、小さなプラグトレイの中で種をまく穴が開けやすく、さらにまいた後に水やりをした途端、土のかさがごそっと減ってしまうことを防ぐことができます。
全体に土がしっとりとするまでよく混ぜこんでいきます。理想的な水分を含んだ土の状態は、掌でぎゅっと握りしめた土のかたまりを指でつつくと、ほろっと崩れるくらい。
注)土に水分が多すぎると、トレイへの土入れや種まきの作業自体がしにくくなります。加減がわからず、つい水を入れすぎちゃった、という時は、焦らずにしばらく土をそのままにしておきましょう。種まき用土は通気性の良いものが多く、あれこれ準備をしているうちに自然と乾いてきます。
土が良い状態になったら、プラグトレイに土を入れます。
全体に土が入ったら、トレイごと、とんとんと落として、セル穴の下から上までしっかりと土が入るようにします。
土の入ったトレイの表面をさっと均して、余分な土を落とします。
この後、トレイの縁にテープを貼って種をまく植物名を書くラベリングをするので、この段階でトレイの周りの縁にたまった土なども落としてきれいにしておきます。
わたしたちが使用しているプラグトレイは、「50穴」「128穴」「200穴」の3種類。私たちが最もよく使う200穴のプラグトレイで、ひとつのセル穴は2.5cm角のサイズです。
私たちのナーサリー仕事で欠かせないのが、箸です。昔修業したナーサリーで教えていただいた愛用品です。箸の先端は鉛筆削りで尖らせておきます。海外からのガーデナー研修生が来ると、
「おーっ、日本のガーデナーっぽいですね!」とよく言われます。
土の入ったトレイの上に同じサイズの空のトレイを重ねて、均等な力でそっと軽く押して外すと、下のトレイの土の表面が押されて、種のまき穴のガイドができています。それを基本に、種の大きさに合わせて、箸の尖っていない側でさらに押してまき穴を開けていきます。セルの列ごとにまく種類が異なる場合が多いからです。トレイ全面に同じ種類もしくは同じサイズの種をまく場合は、件の空のトレイを押して、一気に穴を開けます。
種まきには谷折りにした白い紙に種を出して、箸の先端の尖った側を使ってセル穴の中に落としてまいていきます。
50穴プラグトレイの大きなセル穴やポットに直接まく時は、右下の写真のように箸を使わないことがあります。
種をまいた後は、覆土です。乾いたままの種まき用土をふるいにかけて、覆土用の土をあらかじめ準備しておきます。細かい均一な土で隅々まで覆って、芽が出やすいように整えておきます。トレイの上に余分な土が残らないように気をつけて、適量の土でそっと覆っていきます。
覆土が終わったら、目の細かなハス口を使って水やりをします。水の勢いでまいた種を流してしまったりしないよう、土の表面をさっと濡らすくらい加減で水やりをします。土が乾ききる前に、一日の中で何度か分けて水やりをしています。
水やりの道具は発芽の成績に大きく影響する、と考えています。目の細かな優秀な仕事をしてくれるハス口やじょうろは必須。じょうろは海外のメーカーにも良いものがありますが、十勝千年の森では日本製のじょうろやホースなどの灌水道具を多く愛用しています。日本には良い作り手がいて、恵まれています!
そして、待ちに待った芽だしの時。
土を破って、小さな種が出てくる姿を見つけると、幸せな気持ちになります。
種の殻を連れたまま、生長している芽がなんだか微笑ましい。
温室でぞくぞくと発芽している様子です。
次回は、「キッチンガーデンの庭づくり 鉢上げ編」です。
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