Tokachi Millennium Forest 十勝千年の森 北海道ガーデン

十勝千年の森公式Webサイト

  1. home

2012年、北海道、十勝。大地が、庭に、恋をした。

「人類と自然との未来」を考える場を目指して、十勝千年の森を舞台に2012年に開催された北海道ガーデンショー(HGS)。4人の著名なガーデンデザイナーによって「自然との対話」をテーマに造られた庭は森に息づき、メッセージを発信しつづけています。

「石の記憶」

「石の記憶」デザイン:中谷耿一郎

土と植物以外で唯一この敷地に存在する素材ともいえる麦飯石(ばくはんせき、花こう斑岩の一種)のみを使った寡黙な造形。麦飯石のもつ柔らかな表情がシンプルな構成の庭に温かさや空間としての豊かさをあたえています。端部が地面に消えてゆく低い石積みと石畳からなるランドスケープは、作者がしばしば取り組んでいるテーマです。

「石の記憶」

麦飯を集めたような粒状結晶があることに由来する麦飯石は、多孔質で雑菌や臭いの吸着性が高く、水や空気を浄化する作用を持ちます。石質は柔らかく、地中から掘り出されるとその吸水性ゆえに比較的早く風化が進むといわれますが、日光や風雨にさらされて経年変化を遂げる様子を観察する楽しみもあります。

背景となる林床の草花は、ヤマブキショウマやカラマツソウなどの自生種を植栽して育てています。石に座れば小川の音や鳥のさえずりが聞こえ、木洩れ日が映し出す模様の変化を目にできます。庭に身をゆだねると、周囲の自然と一体になったかのようです。中谷氏は「時間の経過とともに辺りの雑草が庭に押し寄せ、『祝福』してくれるようになれば」と期待しています。

中谷耿一郎

中谷耿一郎 
1946年和歌山県生まれ。山梨県の八ヶ岳の麓で暮らす造園家・ランドスケープデザイナー。自然の中で生活するための環境づくりや景観設計を手掛ける。
2003年度グッド・デザイン賞受賞。
著書に「木洩れ日の庭で」(TOTO出版)がある。

----------

「あなたに会いたくて —楡の木蔭の庭で」デザイン:白井温紀

自然の植生を尊重し、地域の風土・歴史を取り入れた自然体の暮らしを表現する姿勢が持ち味。十勝の馬文化に着目し、馬を飼う家族の物語を題材に構想を練りました。作者の住む十勝管内大樹町でオーガニック栽培の農業者とも交流を重ね、食文化も尊重した庭になっています。

「あなたに会いたくて —楡の木蔭の庭で」 「あなたに会いたくて —楡の木蔭の庭で」

湿地まじりで複雑な様相の河畔林にはスズランやチシマフウロ、エゾノシモツケソウなどの十勝に自生する野の花が育ち、そこから広がる草地には馬草の花が入り交じって咲きます。楡の木蔭の休息シーンは、河畔林の花々に合わせて季節ごとに表情を変えていきます。畑には豆と雑穀が育っています。

作品タイトルには「すてきな庭を造って待っているので、会いに来てほしい」との作者の思いが込められています。自然に寄り添う庭には、時間をかけて醸成した十勝の平和な風景が詰まっています。

白井温紀

白井温紀
英国で開かれる世界最大級のチェルシーフラワーショーに4回入選。2000年、第1回東京ガーデニングショーでテーマガーデンを監修し、「洗濯物の似合う庭」などの作品を発表した。同年NHKテレビ「トップランナー」に出演。2009年大樹町に移住。

----------

「身土不仁2012 夏 北海道」デザイン:竹谷仁志

「身土不仁2012 夏 北海道」 「身土不仁2012 夏 北海道」

身土不二。「自分自身と周囲の環境は一体」という意味の仏教用語。ミズナラ、ヤチダモの暗く深い森を抜け、ヤナギの枝で編んだ小間に立つと光輝く牧草地が目に入ります。北の大地に託した先人の夢が、日高山脈の大自然に連なる美しい風景となって広がります。小川のせせらぎに時の流れを重ねながら、樹上のオオルリやキビタキの囀りに耳を澄ませて目を閉じると、千年の時の音(ね)が聞こえてくるようです。清涼な気に包まれて牧草地の遠くを見ると、視線を受けとめるシラカバが日高の山と紺碧の空へと心を誘います。

水辺には、清楚な青い花。アヤメ、ツリガネニンジン。切り石、鉄、錆び鉄の真の延べ段。鉄、牧草ロールは、人間の営為の印。行の飛び石の径は、緩やかな丘を登りながら曲がり牧草地に溶け込んでいきます。緑陰を抜けて、河辺に踏み出でると牧草地から頬をなでる風が吹き、北の大地の爽快な夏を満喫できます。

竹谷仁志

竹谷仁志
園芸や建築・土木、農業、アートなど異分野の融合が光る造園家。東京都在住。2005年から六本木ヒルズけやき坂花壇プロジェクトをプロデュース。2009年、お花がかり有限責任事業組合を設立。2010年4月、東京インターナショナルフラワー&ガーデンショーでショーガーデン部門金賞受賞。

----------

「The Crossing クロッシング」デザイン:ダン・ピアソン

「The Crossing クロッシング」 「The Crossing クロッシング」

十勝千年の森の多種多様な動植物の生育環境と向き合い、「ひとつの環境から次へとつづく経過」をテーマとした作品。訪れた人々は木漏れ日の中、自然の森を通り、庭へ。柔らかな園路を進み、2本の木の間を通って空間に入ると、庭は静かに姿を現します。空間に弧を描く木道は、ここが単に手つかずの自然ではなく、穏やかに育まれた森と人の営みがあることを表しています。時間をかけて手入れすることで、林床は野の花の豊かな植生に育っていき、訪れる人々は皆、その移り変わりを目の当たりにします。静けさに満ちた空間に身を置き、小川のせせらぎに耳を澄ませば、カツラの木の甘い香りと草花に包まれます。木道の側に置かれた水鉢の水面に光と空、山々の景色が映し出されます。

木道は小川を渡る橋となって、古びた大きな麦飯石の踏石につながり、人々を目の前に広がる草原と森のさらに奥へと進むのを優しく導きます。この庭を歩いて向こう側にあるより大きな自然に気づくきっかけとなれば、との作者の願いが込められています。

ダン・ピアソン

ダン・ピアソン
イギリス在住。1987年からガーデンデザイナーとしてキャリアを積み、2002年にDan Pearson Studio設立。チェルシーフワラーショーに5回入選。日本では、2002年に六本木ヒルズのガーデン設計、同年から現在に至るまで十勝千年の森プロジェクトに携わっている。